老朽化が進むマンションの立退きを実現したケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)建物の状況
 対象建物は、住宅街に所在する建築後約50年が経過した3階建ての居住用マンションでした。

(2)賃貸借契約に関する事項
 受任時、10戸の入居者がいました。建物の老朽化は著しく、修繕費用も嵩み、維持管理が困難な状況となっていました。各賃借人の契約期間はまちまちでしたが、契約期間が長期に及んでいる入居者が多い状況にあり、交渉は難航することが予想されました。受任後、10戸の入居者全員に退去を求める通知を出し、交渉を開始しました。

課題、争点

(1)解除原因または正当事由
 いずれの借主にも契約違反等の解除原因はなかったため、老朽化による建物取壊しの必要性を正当事由として任意交渉中心で進める方針としました。

(2)立退料
 10戸の入居者全員との間で示談合意が成立しましたが、立退料は10戸合計で約400万円でした。

交渉、解決のポイント

(1)複数の弁護士による交渉
 入居者の人数が多いため、当事務所内の複数の弁護士がチームを組んで、10戸の入居者全員との交渉を同時並行で進めていきました。入居者一人一人の意見や要望を丁寧に聞き取りつつ、全体の状況も見ながらご依頼者の立退料の予算内で話をまとめていきました。このことが早期解決に繋がったと思います。

(2)移転先物件探し
 ただちに退去先が見つからない入居者については、物件の希望条件を聞き取った上で、当方でも移転先を探して確保しました。これにより、入居者に大きな負担をかけずに転居を実現することができました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 交渉開始から約1年4カ月で全入居者の退去を実現することができました。貸主は、当初の想定よりも早く次の事業計画に着手することができました。

担当弁護士のひとこと

 居住用建物の退去交渉においては、当方の要望だけを押し付けるのではなく、入居者一人一人と向き合い、丁寧に話し合いを重ねることが、結果的には早期解決に繋がると思います。
 本件も、そのような地道な交渉努力が実を結んだものと言えます。



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