親族間で居宅を無償で使用させていたが、信頼関係が破壊されたため、立退きを求めたケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)建物の状況
 対象建物は、大阪府南部エリアの住宅地に所在する延べ床面積100㎡ほどの2階建の木造戸建て住宅で、築年数は20年ほどでした。

(2)契約に関する事項
 貸主と借主は親族関係にあり、10年ほど前に借主が失業したのを機に、貸主が所有する対象建物に借主を無償で住まわせるようになりましたが、貸借の契約書は作成していませんでした。

課題、争点

(1)解除原因
 無償での貸借関係であり、10年間ほど住居として使用させていたことから、使用収益に足りる期間が経過したと言えること、及び、借主が貸主やその家族に対して長期間にわたって暴言を吐いたり、近隣の迷惑になるような言動を繰り返し、貸主側が注意をしても従わないどころか、貸主側を威嚇、脅迫する挙に及び、信頼関係が破壊されたことを理由に、立退きを求めました。

(2)立退料について
 借地借家法の適用のある賃貸借ではなく、また事案の内容からして、本来、立退料など不要と考えられるケースでしたが、親族間の問題であることからなるべく訴訟にはせずに、できるだけ早期に解決したいとの貸主の意向により、200万円の立退料を支払うことで解決することとなりました。

交渉、解決のポイント

借主に対して立退きを求める内容証明郵便を送付したものの、立退きに応じることはおろか、何の返答さえもなかったため、再度、立退きを求める内容証明郵便を送付しましたが、同様の反応であったことから、直ちに調停の申立てをしました。
 調停では借主は代理人を立てずに自ら出頭し、3回の調停期日が重ねられましたが、立退きの合意は成立せず、不調に終わりました。
 その後、貸主が対象建物を第三者に売却し、その旨を借主に通知しつつ、対象建物を買い取った第三者の協力も得て訴訟の提起を準備していたところ、借主が代理人弁護士を立てたため、代理人同士で交渉の結果、訴訟によることなく、立退きの合意成立に至りました。
 なお、最初に立退きを求める内容証明郵便を送付してから立退完了までに要した期間はおよそ8か月でした。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 対象建物を買い取った第三者は、対象建物に借主が居座っていることを承知の上で買い受けていましたが、貸主との売買契約においては借主が居座り続けている間の賃料に相当する損害金を賠償する特約をしていたため、一日も早く立退きを完了することが重要でした。
 ただ、それにしても200万円の立退料は高額に過ぎると言えるものでしたが、なるべく親族間で裁判沙汰にはしたくないとの貸主の思いからはやむを得ないものでした。

担当弁護士のひとこと

 法律問題というよりも当事者双方の心情的・感情的な問題という側面が強く、その中でいかに早期に立退合意さらには立退完了にまで繋げるかに苦心した一件でした。



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