再開発が盛んなエリアのテナントビルの建替えのために既存の全テナントの立退きを実現したケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)建物の状況
 対象建物は、大阪府内の再開発が盛んなエリアに所在する、5階建てで築年数40年以上になるテナントビルです。

(2)建物賃貸借契約に関する事項
 対象建物には7軒のテナントが入居しており、占有面積は10坪ほどから60坪ほどとテナントにより異なりますが、いずれも来客型の店舗として使用されていました。
 各テナントとの契約の始期は、7年ほど前のもの、15年ほど前のものや、最も古いもので40年ほど前のものなど様々ですが、いずれも2年ごとの自動更新がなされており、契約期間の満了時期もまちまちでした。

課題、争点

(1)解除原因または正当事由
 全てのテナントに対して、同時・一斉に、それぞれの契約期間の満了をもって契約を更新しない旨の通知をしました。
 契約を更新しない理由として、主に、対象建物について実施した耐震診断の結果、耐震性に問題があることが明らかとなったこと、老朽化した対象建物に多額の耐震補強工事などを施すよりも、最新型の10階建のテナントビルに建て替えることの方が合理的であるということを主張しました。

(2)立退料について
 各テナントに支払う立退料、弁護士費用その他の経費を含めた当初予算は2億5000万円でした。
 各テナントに対しては、土地について路線価、建物について固定資産税評価額、国税庁が定める借地権割合、借家権割合を使用して借家権価格を算出した上で、正当事由が5割は存在するとの主張をもとに、借家権価格の半額(合計でおよそ2億1000万円)を提示しました。
 交渉の結果、全テナントについて、借家権価格の前後の金額(合計でおよそ2億2000万円)で解決となりました。

交渉、解決のポイント

7軒のテナント中、6軒についてはテナント側にも代理人弁護士が就き、そのうち5軒については代理人同士の交渉で解決しました。交渉に要した期間は8か月から1年2か月で、立退合意が成立した後の立退完了までの猶予期間は、4か月から7か月(交渉開始からでは、1年2か月から1年9か月)でした。
 1軒のテナントについては代理人が就かず、そのテナントの担当役員と交渉を行い、交渉開始から8か月で立退合意が成立し、その1週間後に立退きも完了しました。
 1軒のテナントについては、代理人同士の交渉で折り合いがつかなかったため、調停の申立てを行い、2回目の調停期日(交渉開始からでは1年6か月)で立退合意(調停)が成立し、その3か月後に立退きも完了しました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 建替後の新しいテナントビルのテナント募集の開始時期から新築工事の着工、既存の旧ビルの解体と逆算して想定していたスケジュールに間に合うように、また、当初の予算の範囲内で、全てのテナントの立退きを完了させることができました。

担当弁護士のひとこと

 テナントとは個別に交渉を行い、早期に立退きに合意してもらえれば、立退料についてある程度の上乗せをするなどの提案をしながら、1軒1軒解決をしていき、その経過を残りのテナントに適時に上手く伝えることでまた解決になるという好循環で、予定どおりに全体解決をもたらすことができました。



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