店舗テナントにつき無断転貸を理由とする建物明渡請求訴訟を提起し、裁判上の和解により明渡しを完了したケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)建物の状況
 対象建物は、東京都内の最寄り駅から徒歩5分圏内の店舗、住居用マンションが立ち並ぶエリアに存在する鉄骨造5階建ての建物で、1階部分は店舗、2階から5階部分は住居用に賃貸されていました。

(2)建物賃貸借契約に関する事項
対象となるテナント(借主)は、1階部分の区画約25㎡を賃借し、約10年にわたって飲食店を営業した後閉店しました。閉店後しばらくして他の飲食店が営業を開始したため、貸主が借主に状況を問い合わせたところ、借主側からは、対象区画の利用主体は借主と同一であり転貸に該当せず、その証拠資料を提出するとの回答を得ました。
ところが、その後借主側から連絡や説明が一切なされず、対象区画の利用主体が不明確な状態が継続していました。

課題、争点

(1)解除原因
 そこで、当事務所が交渉を受任し、建物の利用主体を調査したところ、借主とは異なる法人が飲食店の営業主体となっており、同法人が借主から転借していることが判明しました。
 そこで、無断転貸を理由として、借主に対して賃貸借契約解除の意思表示を行うとともに、借主及び転借人に対して建物の明渡を求めました。

(2)立退料について
 賃貸借契約につき解除原因が存在したため、立退料の額が争点となることは想定されませんでしたが、借主側が早期の明渡に協力する場合に限り、少額の立退料を支払う方針で交渉に臨みました。

交渉、解決のポイント

 賃借人、転借人ともに誠実な対応が見込めなかったため、早期に両者に対して明渡訴訟を提起しました。
 転借人は弁護士に依頼して応訴しましたが、賃借人は積極的に争う姿勢を見せなかったため、裁判所に働きかけを行い、賃借人に対する訴訟について先に明渡判決を得ることができました。

 その後、転借人が明渡義務を負うことを前提として、明渡条件や明渡時期について交渉を行い、その結果、和解の日から2カ月以内に、賃借人及び転借人が造作や動産類の全てを撤去した上で明け渡すことを内容とする裁判上の和解が成立しました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 対象区画に関する賃貸借契約は、周辺の賃料水準と比較して、長期にわたって賃料が低額に抑えられていましたが、明渡が実現したことにより、従前の賃料の2倍を超える条件で新たに賃貸することができました。

担当弁護士のひとこと

 借主や転借人の対応が誠実でなかったこと、対象区画の賃料が相場の水準からするとかなり低額であったことから、任意交渉によった場合は解決までの期間を引き延ばされるおそれがありました。
 そこで、転貸の確実な証拠を収集し、訴訟を提起するという方針を選択したことが早期解決につながるポイントであったと思われます。



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