交渉により共同住宅の立退きを実現したケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)建物の状況
 東京都内の住宅街にある、軽量鉄骨造2階建ての共同住宅です。
 建物は築30年程度であり相応の経年劣化・老朽化がみられますが、朽廃という状況には至っていません。

(2)建物賃貸借契約に関する事項
 1階5室、2階5室、合計10室の居室があり、空室の1室を除く9室の立退き交渉を行いました。
 占有面積は、約25㎡です。
 契約期間は2年です。
 賃借人の中には、入居したばかりの方、何回か更新している方などがいましたが、概ね契約期間の短い賃借人が多い事案でした。

課題、争点

(1)正当事由
 正当事由として、建物の経年劣化・老朽化により建て替えが必要な状況であること、この建物と同じような条件の代替物件が豊富に存在することから、賃借人がこの建物に居住し続ける必要性が小さいという点が挙げられます。

(2)立退料について
 賃借人ごとに賃貸の条件が異なることから、0円~40万円の範囲で立退きにご同意いただきました。

交渉、解決のポイント

 賃借人に解約申入れの書面を送付して、交渉を開始しました。賃借人のほとんどは、すぐに連絡が取れて、立退きの条件について協議し、速やかに合意に至ることができました。
 一部の賃借人は、公営住宅に入居したいとの希望を有しており、その申し込みの結果次第で立退きに応じるかどうかを決めるとおっしゃっていましたが、運よく公営住宅に入居することができたため、立退きの合意が得られました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 対象となった9室全部の立退きが実現し、建替えが可能になりました。

担当弁護士のひとこと

 常に裁判の可能性を念頭に置きつつも、賃借人に状況を誠実に説明するとともに、立退料の算定根拠などを示して、ご理解を得ることが早期に解決する基本であると考えます。



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