無断増改築を理由とする解除が認められたケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)建物の状況
 賃貸人は東京都23区外の市中の繁華街に木造2階建ての貸し建物を有していました。
賃借人は、同建物において家族で飲食店を経営し、かつ、自宅として使用していました。

(2)建物賃貸借契約に関する事項
 賃貸借契約が締結されたのは、昭和10年代であり、建物建築から90年近くが経過していました。
 賃借人は、借りていた建物を無断で増築し、2倍以上の広さの建物にした上で、店舗兼居宅として使用していました。
 このように賃借人は、長い年月を経て、賃借していた建物を自己の所有物であるかのように扱っていたところ、賃貸人に無断で足場を組み、屋根及び壁面の張替えを行おうとしたため、賃貸人が当事務所に相談をしました。

課題、争点

(1)解除事由、正当事由
 まずは無断改築を直ちにやめるよう通知をしましたが、賃借人がこれに応じる気配を見せなかったことから、直ちに明渡訴訟の提起を行いました。
 無断改築を理由とする解除が認められない場合に備え、解約申入れによる賃貸借契約の終了も主張しました。
 解約申入れの正当事由としては、賃貸借期間が90年近くにも及び、建物は老朽化しており、建替えの必要性があること、賃貸人は周囲の土地と合わせて一体として土地の有効活用を図る必要性があること、賃借人は貸し建物であるにもかかわらず、無断増改築を繰り返し、自らの所有物であるかのような振る舞いを続けているため、信頼関係が破壊されていることなどを主張しました。

(2)立退料について
 第一審では、賃借人が和解協議を拒絶したため、判決となり、無断改築による解除が認められ、立退料なしの明渡請求が認容されました。
 控訴審においては、第一審の判決を受けて、賃借人の態度が軟化したため、和解協議が行われ、2年間の明渡猶予、500万円の立退料の支払いという内容の和解が成立しました。

交渉、解決のポイント

 本件の貸し建物の立地は極めて良く、また、賃借人は貸し建物で飲食店の経営をしていたため、借家権価格や営業補償を考えると、1億円以上の立退料の支払いを求められてもおかしくはない事案でした。

 賃貸人は、これまで賃借人の無断増改築を黙認してきましたが、さらなる無断改築の機会をとらえ、訴訟を提起したことで、立退料なしの第一審判決を得ることができ、これを有利に利用して低額の立退料で明渡を受けることに成功しました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 老朽化した貸し建物は速やかに取り壊され、周囲の土地と一体化したため、現在賃貸人において商業ビル等の建築が計画されています。

担当弁護士のひとこと

 賃貸期間が長期間になると、賃借人は貸し建物を我が物のように考えるようになり、立退きはより困難になる傾向にあります。
 さらに本件の貸し建物は繁華街にあり、極めて好立地であったため、立退料も相当高額になることが予想されました。

 本件は、賃借人が老朽化した貸家の改築を賃貸人に無断で行おうとした事実を捉えて明渡請求訴訟を提起したことが功を奏し、極めて低廉な額の立退料で立退きを実現することができました。
 このような機会を逃すことなく立退きにつなげることが肝要です。



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