借地上の建物に飲食店がテナントとして入っていたことから、借地人から建物ごと買い取って2年後に建物収去土地明渡しを実現したケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)土地の状況
 市内中心部の最寄り駅から徒歩2分の商業地に所在する400㎡の土地で近隣にはマンションや飲食店が立ち並んでいます。
 土地上の建物には近所でも評判で昼食時には毎日並びが出る飲食店がテナントとして入っていました。
 貸主は隣接する土地1000㎡も有していましたが、このテナントの飲食店が使用している土地があるために旗竿地のような使いにくい形になってしまっており、駐車場として利用していたのみでした。

(2)賃貸借契約に関する事項
 土地の賃貸借契約は現在の借地人の母と貸主の父の間で交わされたものでした。
当初は土地上に借地人が自宅を建てて居住するとともに、その隣の建物を飲食店に貸していましたが、今では借地人は別の場所に自宅を構えて借地上の建物は別の人に貸して賃料収入を得ていました。

課題、争点

(1)解除原因または正当事由
 借地人には契約違反等の解除原因はなく、借地契約の期間満了が近いわけでもありませんでしたが、借地人自身が立退料の額次第では土地を返還しても良いという意向を貸主に示していたため、この機会に無理のない条件で土地を返還してもらうべく交渉を開始しました。

(2)立退料
 当初は相手方から立退料として1億円との提示があり、裁判になった場合は3000万円から4000万円ほどの立退料となる可能性があると見積りましたが、結果として2600万円で解決することができました。

交渉、解決のポイント

(1)立退料の算定
 土地は公示地価で約8000万円であり、借地権価格は約4000万円でした。
双方が対立しているわけではありませんでしたが、テナントとの関係もあって話が単純ではなかったため、双方ともに代理人として弁護士が入って話を進めることとなりました。
 当初、借地人は更地での返還を前提に4000万円を超える金額の立退料を提示していましたが、テナントの飲食店が人気店であるため、建物からの退去を求めた際には立退料が高額になるであろうことは双方にとっての共通認識でした。
 その後、双方が協議を重ねる中でテナントの飲食店が入ったまま建物ごと貸主が買い取ってテナントとの退去交渉は貸主が行うということで合意が成立し、テナントの立退料を考慮して、借地人からの建物買取代金は2600万円となりました。

(2)テナントの退去
 貸主は建物を買い取った後にテナントとの協議に臨みましたが、実は貸主の母親がテナントの飲食店の常連客であり仲が良かったこともあり、事前にテナントのオーナーから後2年くらいで店をたたんで隠居しようと思っているという話を聞いていました。
 そのため、テナントの飲食店に対しては立退料の支払いを要することもなく、2年後に予定通り明渡しを受けることができました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 借地契約の期間満了がまだ先であったため半ば諦めていた本件土地400㎡を早めに返してもらうことができたため、隣接する土地1000㎡と併せて有効活用することができるようになりました。

担当弁護士のひとこと

 土地の明渡しには、場合によっては建物賃借人などの利害関係者が出てくることがあります。
 当方が手にしている人間関係や情報を最大限駆使することで、他の人には実現できないような有利な解決策を作り上げることもできるようになります。
 人間関係が良好だったり、借地人にとってのタイミングが良かったりするのであれば、必ずしも多額の立退料を支払わなくとも土地の返還を受けることができるのだということを再認識したケースでした。



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