飲食店や美容室等の複数のテナントが入っている建物につき建物所有者が地代不払いを繰り返していたため、建物収去土地明渡しを実現したケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)土地の状況
 市内中心部の大きな幹線道路沿いの角地で広さは約200坪。
 築90年を超える2階建ての建物には、1階に飲食店、美容室、物販店などのテナントが入っているほか、2階には建物所有者が居住していました。

(2)賃貸借契約に関する事項
 土地の賃貸借契約は先々代の頃から続いていたもので始期も明らかではありませんでしたが、現在の建物所有者が相続した10年ほど前から地代の滞納をするようになっていました。
 建物所有者は各テナントからの賃料はしっかり受け取り続けていました。

課題、争点

(1)解除原因または正当事由
 建物所有者である借地人には賃料不払いによる契約解除原因がありましたが、当該建物は自身の住居であるだけでなくテナントも入っているので、地代滞納分を支払うので何とか借地契約は継続したいと懇願しました。
 貸主は、借地人に対して地代滞納分の具体的な支払予定を示すよう求めましたが、借地人は半年後に全額支払うなどと述べるだけでした。

 それでも貸主はテナントへの影響も考慮して半年待ちましたが、借地人は地代滞納分を払わなかっただけでなく貸主からの連絡にも応じなくなり、電話をしても出ず、訪問しても居留守を使うようになりました。

(2)立退料
 貸主は半年待つ間にテナントにも事情を説明していたため、借地人に対して建物収去土地明渡請求訴訟を提起するに至ったときにはテナントも状況を理解しており円満に退去する意思を示しました。そのため、貸主は各テナントに移転費用の一部に充てるようにと30万円ずつの立退料を渡しました。

交渉、解決のポイント

(1)建物賃借人であるテナントとの関係
 建物所有者である借地人に対して毎月の賃料をきちんと支払っていたテナントは、巻き込まれてしまった被害者のような立場ではありましたが、土地賃貸借契約が契約違反によって解除される以上は建物から出ていかなければならない地位にあります。
 貸主からテナントに対して、必ずしも支払う必要があるわけではない立退料30万円を支払って円満な関係を築いたことで、テナントからは借地人に対する賃料支払状況や借地人が2階で生活していること・生活時間帯などの貴重な情報を聞き出すことができました。

(2)居留守を使う借地人に対する訴状の送達
 貸主は借地人を被告として訴訟を提起しましたが、借地人は居留守を使い訴状の特別送達を受け取ろうとしなかったため裁判を始められませんでした。
 そのため、貸主はテナントから聞いた情報や電気ガスなどの使用状況をまとめた所在調査報告書を作成して裁判所に提出し、借地人が居住しているものの居留守を使っているだけであることを示して、付郵便送達という方法を使って裁判を開始することとしました。
 借地人は裁判期日にも出頭しなかったため、貸主の主張を全面的に認める判決が出されました。

(3)判決に従わない借地人に対する強制執行
 借地人は建物収去土地明渡を命じる判決が出たあともそのまま居住を続け、貸主が退去を求めるよう連絡をしようとしても相変わらず居留守を使い続けました。
 そのため、貸主は強制執行の申立てを行って、執行官立会のもとで強制的に借地人を退去させることとしました。
 強制執行当日は警察官同席のもとで執行官が現地に赴きましたが、借地人は居留守を使い続けたため同行した鍵屋が入口の鍵を開けて中に入り、建物内にいた借地人を退去させました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 建物取壊後に更地になった本件土地は幹線道路沿いの角地で好立地であったため、すぐに条件の良い話がいくつも貸主のもとに舞い込んできました。
 その中でも地域の優良企業の中核店として是非とも使わせて欲しいという話を一番魅力に感じた貸主は、新しい立派な建物を建てた上で当該優良企業との間で十分な賃料での賃貸借契約を締結しました。

担当弁護士のひとこと

 土地の明渡しには、場合によっては建物賃借人などの利害関係者が出てくることがあります。
 そのような複雑な人間関係がある中で、味方に引き入れるべき者との関係を上手く築きながら進めることがスムーズな解決のために何より重要と感じます。

 地代滞納を繰り返す者、裁判所からの送達を受け取ろうとしない者、敗訴判決が出た後であってもそれに従おうとしない者、といった任意の交渉では埒が明かないような人物が相手であっても、順を追って法的手続をとっていけば正しい結果を得ることは可能であると思います。



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