土地賃貸借契約の更新拒絶通知に対し、借主が建物買取請求権を行使し、建物買取代金額が争点となったケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)土地の状況
 大都市の繁華街に位置する土地であり、土地上には大規模な5階建てのビルが建っていました。

(2)土地賃貸借契約に関する事項
 土地賃貸借契約は長年継続していましたが、期間満了時までにあと1年となった時点で、借主から条件次第で、退去も検討するとの打診がありました。借主からは、同時に借地権を第三者へ譲渡したいとの話もありました。しかし、貸主は最終的に、土地賃貸借契約を更新しない旨を通知したところ、借主から建物買取請求がなされるとともに、当該建物の買取金額が争点となりました。

(3)特記事項
 借地借家法13条の買取請求の対象たる建物の「時価」は、当該建物の現状を前提とした価格に、建物の存在する場所的環境も参酌すべきと解されています。本ケースにおいては、「建物の時価」に、本件土地の価格の一定割合の金額を加算した金額になります。

課題、争点

(1)建物買取請求権行使の場合の買取金額について
  借主は、当初1億円程度の金額を提示していましたが、最終的な解決額は約2500万円となりました。

交渉、解決のポイント

 借主は当初から「条件次第では立退きを検討してもよい」と申し出ていましたが、実際には立退料をつり上げるためか、借地権を譲渡するなどの意向も示していました。それに対して当方は、「地主はすでに土地賃貸借契約の更新を拒絶し、一旦それを借主が了承した以上、借主は借地権譲渡を行うことはできない。」と主張し、その根拠を詳しく説明しました。
 その結果借主は借地権譲渡をあきらめ、最終的には、建物買取請求権を行使してきました。

 これにより建物買取請求権を行使した場合の買取金額が最大の争点となりました。本件土地は大都市の中心部に存在しているため、建物買取金額は相当高額になり得る懸念がありました。
 実際の交渉は、双方がそれぞれ、不動産鑑定士に意見を求め、各意見書を提出し、買取金額についての主張を行うという方法で行われたものですが、双方が主張するそれぞれの金額には大きな隔たりがありました。

 当方は、客観的な数値である路線価による評価額を重視すべきであること及び当方側の意見書が正当であることを論理的に主張し、借主と粘り強く交渉しました。その結果、当方が当初提示した金額に近い、約2500万円で建物を買取ることが決定しました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 貸主は、立退き後の土地に、収益物件を建築し、土地の高度利用、有効活用が実現しました。

担当弁護士のひとこと

 土地所有者の有効利用計画の実現のためには、土地賃貸借契約期間の満了時までに立退きを実現しなければなりません。依頼者はもちろんのこと、協力者である不動産鑑定士等とも情報共有を欠かさず、その状況に応じた適切な条件提示を行う必要があります。
 建物買取請求に対する対応については比較的前例が少なく苦心した側面もありましたが、本件においては常にそのことを念頭に置いて交渉を進めた結果、解決することができました。



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