借地権の譲受人から訴訟により借地返還に成功した事例

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)土地の状況
 東京都内の宅地約500㎡の土地上に、2階建ての店舗兼居宅が建っている。対象土地は、最寄駅から徒歩数分程度の好立地にあり、周辺は商業エリアとなっている。

(2)土地賃貸借契約に関する事項
 対象土地は元々、個人の借主がその土地上に2階建ての店舗兼居宅を建てて使用していたが、その借主の経済的事情から、2階建ての店舗兼居宅が公売となり、ある法人がその建物を落札した。
 借地上の建物所有者変更に伴い、対象土地の借地人も個人の借主から法人に移行することになるが、地主はこの借地権の譲渡を承認せず、借地権の無断譲渡を理由として賃貸借契約の解除と対象土地の返還を求めた。

(3)特記事項
 借地借家法20条は、借地上の建物を公売で取得した際、地主が借地権譲渡を承諾しない場合に、地主の承諾に代わる裁判所の許可を求めることができる旨を定めているが、本件で対象土地上の建物を公売で落札した法人は、借地借家法20条に定められた期間内に裁判所に対して許可申し立てを行っていなかった。

課題、争点

(1)解除原因または正当事由
 建物を落札した法人が借地借家法20条の期間内に裁判所に対する許可申立を行っていなかったため、借地権の無断譲渡は明白であった。そこで、借地権の無断譲渡を理由に土地賃貸借契約の解除と土地の返還を求めて裁判所に提訴した。

(2)立退料について
 借地権の無断譲渡による解除であることから、立退料の支払いは無し。

交渉、解決のポイント

 借地借家法20条の期間内に裁判所に対する許可申立を行っていなかったため、借地権の無断譲渡は明白であり、土地賃貸借契約の解除自体は問題無く認められた。借主である法人側は、落札した建物の買取請求権を行使してきたが、建物は老朽化していたため、鑑定評価の結果非常に安い金額での買取となった。結果的に、非常に安い金額での建物買取と引き換えに土地賃貸借契約の解除が認められ、対象土地の返還を実現することができた。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 対象土地の返還後、借地上の建物を取り壊し、新たに事業者向けに土地を賃貸したことで、土地の再利用に繋がった。

担当弁護士のひとこと

 本件は、公売で建物を落札した法人が、借地借家法20条の期間内に裁判所に対して地主の承諾に代わる許可の申立てを行わなかった比較的珍しいケースです。もっとも、仮に法人側が借地借家法20条の期間内に申し立てを行っていた場合でも、その他の事情から裁判所の許可は認められないと見込まれる案件でした。

 法人側が建物買取請求権を行使した際、裁判所が任命した鑑定人により建物の買取価格の鑑定が行われましたが、建物が相当に老朽化していたこともあり、当初想定していたよりかなり安い価格での買取となりました。結果的に、価値の高い不動産を、非常に割安な対価の支払いで取り戻せたものであり、クライアントの利益に貢献できたと思っています。



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