賃借人の債権者が借地上の建物及び借地権を差押えたケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)土地の状況
 東京都内の戸建て住宅が立ち並ぶエリアで、賃貸人が隣地を賃借人に貸し、賃借人は木造2階建ての建物で居住していました。
   
(2)土地賃貸借契約に関する事項
 賃貸借契約は昭和20年代に締結されており、前賃借人の死亡後、相続手続はされておらず、前賃借人の相続人3名が建物及び借地権を共有し、そのうち1名が借地上の建物で生活している状態でした。

 賃借人は、30年以上前から地代の滞納をするようになり、ここ数年は全く支払われていませんでしたが、賃貸人は近所のよしみで、賃貸借契約を解除せず、顔を合わせれば地代を払うようお願いするということを続けていました。

 ところが、賃借人の一人の債権者が、債務不履行を理由に本件建物及び借地権を差押え、競売申立を行ったことから、見ず知らずの第三者(競落人)が賃借人になることを避けるために、賃貸人が当事務所に相談に来られました。

課題、争点

(1)解除原因
 競売手続の完了前に、賃料不払いを理由とする賃貸借契約の解除の通知を行い、速やかに訴訟提起を行いました。

(2)立退料等について
 賃借人のうち1名は、第一回口頭弁論期日に欠席したため、直ちに欠席判決となりました。
残り2名には弁護士が就任しましたが、賃貸人が未払賃料の大幅な減額を提案したことで、賃借人が賃料不払いによる解除を認め、建物の持分を賃貸人に贈与する旨の裁判上の和解が成立しました。

交渉、解決のポイント

 賃借人らの訴訟提起前や訴訟係属中に競売手続において売却許可決定が確定してしまうと、競売により建物及び借地権を取得した第三者を新たに相手方とする必要があり、解決まで時間がかかったり、解決金の支払いを求められたりする場合があります。そこで、当事務所は、受任後、解除の通知から訴訟提起までを迅速に行い、さらに未払賃料を大幅に減額するという提案をし、速やかに和解を成立させることができました。

 また、競売手続きにおいては、売却許可決定に対して執行抗告をするなどして、売却許可決定の確定が明渡訴訟の判決確定及び和解成立後となるように対応しました。
 競売により建物及び借地権を買い取った第三者に対しては、判決確定及び和解成立によりすでに借地権は消滅していることを説明し、建物の無償譲渡を受けることができました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 30年以上地代収入のなかった貸地の賃貸借契約を解除することができ、建物も取り壊すことができたため、賃貸人は同土地を自由に使用、処分することができるようになりました。
 なお、建物の解体は、行政からの補助金と和解により支払われた未払賃料を使用することで実質的な負担なしに行うことができました。

担当弁護士のひとこと

 建物及び借地権の競売手続により第三者が借地人となってしまうと、賃料不払いがあったとしても解決のために時間がかかったり、解決金等の余分な費用がかかる可能性があったため、第三者が出現する前に従前の賃借人との間で和解を成立させ、判決を取得する必要がありましたが、迅速な訴訟提起及び和解に向けた尽力により競売手続の売却許可決定前に解決することができました。



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