準共有となっている借地権の一部を先に買い取ったケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)土地の状況
 東京都内の住宅地にある土地で、居住用建物を所有していた借地人が死亡し、空き家となっていました。
   
(2)土地賃貸借契約に関する事項
 借地人の相続人は3名で、それぞれ別に居宅を有していたため、借地上の建物は空き家となっていました。
 賃貸人は、借地人の相続人3名との間で、借地権の買取り交渉を行い、内2名からは3000万円で売却する旨の内諾を得ていましたが、1名が同金額での売却に頑なに反対し、交渉が難航したため、当事務所に相談に来られました。
 賃貸借契約の期間満了が迫っていたため、既に借地権の売却代金について内諾を得ていた2人から、建物の持分及び借地権の準共有持分を買い取り、自ら借地権の準共有持分権者となった上で、残り1名に対しては、期間満了による賃貸借契約の終了を理由とする建物収去土地明渡請求を提起しました。

課題、争点

(1)正当事由
 建物は空き家となっていたため、賃借人に土地使用の必要性が無いこと、賃貸人が借地権の準共有持分権者となっており、かつ持分の過半数を有していること、建物は賃貸人が管理していたにもかかわらず、借地人が無断で建物に侵入し、滞在するという行為を繰り返しており、信頼関係の破壊があることなどを正当事由として主張しました。

(2)立退料等について
 他の借地人には、一人1000万円を支払っていたため、賃貸人としては1000万円の立退料の支払いは許容範囲でした。

交渉、解決のポイント

 裁判官の心証としては、直ちに正当事由を認めることは難しいというものであったため、賃貸人から上記1000万円の立退料の支払いを提案し、裁判官から相手方を説得してもらうことができ、立退料1000万円で明渡す旨の和解が成立しました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 賃貸人は、当初から賃借人3名に提示していた3000万円での借地権の買取りに成功し、建物も取り壊すことができたため、賃貸人は同土地を自由に使用、処分することができるようになりました。

担当弁護士のひとこと

 土地の賃貸借契約において正当事由を裁判所に認めてもらうことは容易ではありませんが、本件では、借地権の買取りに応じていた借地人から先に借地権を買い取ってしまうことで、その金額が立退料として適正なものであるとの心証を裁判官に抱かせることができたことが成功のポイントであったと思います。



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