2 貸し土地の立退きは法律問題である
貸し土地の立退き請求権は、貸し土地の賃貸借契約の終了によって生じる法的権利です。賃貸人と賃借人との間で、賃貸借契約の終了に関する協議がまとまらず、合意による解約ができなかった場合には、強制的に賃貸借契約を終了させる必要があります。
借地借家法又は借地法の適用がある貸し土地の賃貸借契約を強制的に終了させる手段としては、主に(1)債務不履行に基づく解除、(2)貸借契約の更新拒絶がありますが、賃貸人からの契約の終了は、法律や判例により厳しく制限されています(借地借家法又は借地法の適用がある貸し土地と同法の適用がない貸し土地の区別は、3 貸し土地の立退きができる場合と立退きの方法(1)借地借家法または借地法の適用がある貸し土地と同法の適用がない貸し土地の区別で解説しています。)。
(1)債務不履行に基づく解除
解除とは、賃貸借契約の片方の当事者が、契約または法律の規定によって、すでに有効に成立した賃貸借契約の効力を将来に向かって消滅させることを言います。
土地の無断転貸や賃料不払い等の債務不履行(法律上・契約上の義務に違反すること)を理由に賃貸借契約を解除する場合、立退料を支払う必要はありません。
もっとも、賃借人に単なる債務不履行があっただけでは解除は認められません。
すなわち、判例は、賃貸借契約が当事者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であることを理由として、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊するに至った場合に限り、契約の解除を認めています(詳細は3(2)ア 賃借人に賃貸借契約上の義務違反がある場合の貸し土地の立退きとその方法で解説しています。)。
(2)賃貸借契約の更新拒絶
更新拒絶とは、契約上又は法律上定められた存続期間満了時に、次回の契約の更新をしないという賃貸人の意思表示をいいます。賃貸借契約を更新拒絶によって終了させる場合、賃貸借契約の更新を拒絶する「正当事由」が備わっている必要があります(借地借家法第6条、旧借地法6条、同4条1項但し書き)。
正当事由の有無は、賃貸人・賃借人それぞれの土地利用の必要性を中心に、立退料の支払い等も考慮して判断されます(詳細は3(2)イ 土地賃貸借契約の存続期間が満了した場合の貸し土地の立退き方法で解説しています。)。
(3)解約申入れ
借地借家法又は借地法の適用がない貸し土地の賃貸借契約の場合で、かつ、期間を定めなかったときは、賃貸人からの解約申入れにより契約を終了させることができます。その場合、解約申入れの日から1年経過後に賃貸借契約が終了します(民法617条。詳細は3(3)イ 賃貸借契約の期間が終了した場合、または契約期間が定められていない場合の立退きとその方法で解説しています)。