貸し建物を短期間に明渡完了したケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)建物の状況
 神奈川県内のターミナル駅から徒歩圏内の住宅街にある一団の土地上に、複数の2階建貸し建物が建ち並んでいました。その大半は床面積が80㎡前後のファミリータイプの建物でした。

(2)建物賃貸借契約に関する事項
 借主ら家族はいずれも長年対象物件に居住していましたが、約1年前から貸主が交渉を始め、2軒を除く全世帯が退去していました。
 残る2軒については、複数回の更新を経て、直近の契約期間は2年間でしたが、契約期間満了後に解約申入れの通知をしました。

課題、争点

(1)解除原因または正当事由
 解除原因は存在せず、建物老朽化、有効活用を正当事由とする明渡しです。

(2)立退料について
 賃料の約8か月分から10か月分に相当する立退料を支払う内容で各借主と合意が成立しました。

交渉、解決のポイント

 当事務所が明渡事件を受任する約1年前、別の代理人弁護士を通じて、賃料の約6か月分に相当する立退料を提示したうえで立退き交渉を試みたものの、移転先物件が見つからない等の理由により借主と事実上没交渉となっていました。

 そのため、当事務所で受任後、改めて立退き交渉を仕切り直すこととしましたが、借主は、やはり移転先物件が見つからない等の理由により、明渡し自体に難色を示していました。
 しかしながら、早期の立退きに応じる場合には立退料の金額を上乗せする余地もあることを条件に粘り強く交渉した結果、借主が転居に前向きとなり、最終的には合意成立の日から数週間後に退去することを前提に解決することができました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 貸主は、当初より明渡後の土地上に住居用マンション建築を計画しており、合意成立後直ちに新物件の建築に向けた準備を進めることが可能となりました。

担当弁護士のひとこと

 対象物件の家賃は近隣の同種物件に比べて低廉であったことや借主が何匹もペットを飼育していたことなどから、近隣で同条件の物件を見つけることはなかなか難しく、借主側には立退きを急ぐ理由はなかったため、まずは借主に立退きを前向きに考えてもらうための信頼関係の構築に心血を注ぎました。

 特に、別の代理人弁護士を通じての交渉に一度失敗しており、1年近くの間借主と話をすることすらままならない状況が続いていたため、その状況を打破し交渉のテーブルに乗せたことで大きく潮目が変わったように感じます。
 結果的に当初の予算より数ヶ月分の賃料を上乗せすることにはなったものの、2軒ともほぼ同時期に退去することとなり、交渉を開始してから約4か月という早期の明渡しを実現できたことは大きな意義があると思われます。



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