契約解除事由のない借地について、交渉により立退きを実現したケース

※ 弁護士の守秘義務に関する日弁連規程第4条第4号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

ケースの概要

(1)土地の状況
 住宅街の中にある約260㎡の宅地です。福岡市の中心から地下鉄で約10分と至近であり、近くに大型商業施設もあることから、福岡県内でも住宅街として非常に人気の高いエリアにあります。

(2)賃貸借契約に関する事項
 土地の約半分ずつを別々の借地人に賃貸しており、それぞれ戸建ての木造住宅を建てていました。一方の住宅は貸家で賃借人以外の第三者が居住していましたが、もう一方の住宅は誰がどのように使用しているか当初は不明な状況でした。
 契約書によると、土地の賃貸借契約は借主が建物を所有する目的で、約57年前に締結されたものでした。旧借地法に基づいて、借地の契約期間は30年、その後20年毎に自動更新となっていましたので、7年前に契約が更新されており、現在の契約期間が満了するまでにはあと13年近くありました。

(3)特記事項
 土地の所有者は、隣接する約250㎡の土地も所有しており、本件土地の立退きを受けた後、隣接土地と併せて賃貸アパートを建築することを計画しました。

課題、争点

(1)解除原因または正当事由
 賃貸借契約の期間が13年も残っており、借地人側に特段の契約違反の事実などもなかったため、所有者からの権利行使として立退きを求めることはできませんでした。
 そこで、まずは借地人にコンタクトをとり、一定の立退料と引換えに立退きを依頼することが可能か確認し、その後条件交渉を進めていくことにしました。

(2)立退料
 立退料については、当初の予算として借家権価格を参考に1件あたり1500万円を見積もっていました。
 最終的に、一方の借地人は400万円、もう一方の借地人は900万円の立退料を支払い、当初の予算の半額以下に納めることができました。

交渉、解決のポイント

(1)土地Aについて
 本件土地は2つに分けて賃貸しているため、それぞれの借地人と個別に交渉を進めることとなりました。ここでは便宜上、それぞれの貸し土地のことを土地A、土地Bと言います。
 土地Aの借地人は約30年前に死亡しており、3人の子供が相続していました。土地Aの上の建物は賃貸されており、これら3人の相続人とは別の第三者が居住していましたので、借地人に立退きを求めるためには建物の賃貸借関係を終了させる必要がありました。
 当方からは3人の借地人に対して100万円ずつ支払うことに加え、借地人から建物賃借人への立退料100万円を払うことを提案して借地人らを説得し、提案どおり合計400万円の支払いで立退きの合意を得ました。

(2)土地Bについて
 土地Bの借地人も、10年以上前に死亡し、2人の子供が相続していました。土地B上の建物には誰も居住しておらず、ながらく荷物置場として使用されていました。
 土地Bの借地人らは当初より交渉を弁護士に依頼したため、交渉はこの弁護士との間で行うこととなりました。

 相手方弁護士は契約期間が存続していることを主張して当初は立退きを拒絶していましたが、当方は最初から500万円の立退料を支払うことを提案し、退去の検討を求めました。その後、向こう数年分の荷物の保管場所の代金や荷物搬出費用として400万円を上乗せし、最終的に900万円の支払いで立退きの合意を得ました。
 相手方に弁護士がついていたため交渉は厳しいものとなりましたが、当方としても土地Aの立退きが当初の想定よりも低い金額で合意できたため、土地Bについて余裕をもった提案をすることができました。

解決後の姿、解決により貸し主が享受した利益

 当初3000万円の予算を見積もっていたところ、合計1300万円で解決することができ、大幅に予算を下回ることができました。
 もともと極めて低い地代で土地を貸していたところ、立退きの実現により隣地と併せて500㎡以上の敷地にアパートを建築することが可能となり、より高い収益を得ることができるようになりました。

担当弁護士のひとこと

 本件土地はここ数年間の地価上昇が著しい場所にあり、近年は徒歩圏内に大型商業施設が開業するなど非常に利便性の高い土地であったことから、当初は相当高額な立退料を請求されることも覚悟していました。予想を下回る金額で合意できたのは、いずれの相手方も自ら本件土地上に居住していなかったことが要因の一つであったと思われます。
 当方側に立退きを求める法律的な根拠がないことから困難な交渉になると思われましたが、当初から相手方の損失を補償することを丁寧に説明し、相手もこれを理解したため、比較的スムーズに交渉を進めることができた事案です。



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